翻訳ものが実は苦手である。
ちょっとした調べ物をしていてこの本がアンテナにひっかかる。
何とも美しい短編集。
特に表題作の「停電の夜に」はある事件をきっかけとしてなのか、
伴に暮らす生活の倦みからなのか、
子供がいることを家族とするならば家族になる機会に躓いたことからなのか、
愛を失いつつある夫婦のお話。なんとも切なくやりきれなく。
蝋燭の光の揺らめきと相まってなんとも絵画的。
二人のかつて愛があったからこそ、美しい光のそこで影のようにある悪意のようなものの揺らめき。
何しろ悲しい。女は悲しみからひきこもり、そして男はこうして愛を失っていくのかと溜息が出る。
良いも悪いもない。仕方のないことの美しいセンチメンタリズム。日本語訳も素晴らしい。
ジュンパ・ラリヒは米国に住むベンガル人であり両親は伴にカルカッタ出身であるということ。
「巡りあわせのお弁当」を見ても思ったのだけれど、繊細な心情持つという面で日本人の感性に通じるところがあるような気がする。インド文化には興味を惹かれる。